1.「あせも」の原因は?
「あせも」は汗疹、または汗貯留症候群と言います。原因は、たくさんの汗を掻いた時に、汗管という汗の出る通り道が閉塞することにより、汗の皮膚表面への流出が妨げられ、汗が皮膚内に貯留して小水疱を生じたものです。 一般に、「あせも」は小児に好発します。
理由として、小児は屋外で活動することが多いということも挙げられますが、小児においては成人に比べて、汗腺の単位面積当たりの数が多いことが挙げられます。汗腺の総数は、小児と成人とでは同じであるため、体表面積を考慮すると、汗腺密度は成人と比べて、新生児で12倍、1歳児で8倍と言われています。
それ以外には、肥満や甲状腺機能亢進症などの基礎疾患で、多汗症がある場合も「あせも」を生じやすいと考えます。 以上のような背景に、高温多湿等の条件で著しい発汗が起ったときに「あせも」は発症します。
2.赤いあせもと白いあせも
「あせも」は水疱の生じた部位により
の3つに分類されます。
このうち①水晶様汗疹が「白いあせも」で、②紅色汗疹が「赤いあせも」です。また、③深在性汗疹は、熱帯地方や高温環境下で数ヶ月間働いた人に起るもので、よく見られるものではありません。
①水晶様汗疹は、日焼け後や急性熱性疾患時(発熱を生じる病気)に、透明で水滴のような小水疱が密生して生じたものです。これは軽度の表皮の損傷により、汗孔(汗の出口)が塞がって、角質内に汗が溜るため生じると考えられます。炎症や自覚症状を欠き、水疱は自然に破れ、薄い皮がはがれて数日以内に治ります。
②紅色汗疹は、高温多湿などで発汗が持続した場合や被服部の局所湿潤が持続した場合に生じます。症状は、前額部、項頚部、被服部、四肢屈側などに、粟粒大から米粒大までの紅色丘疹が、密生して生じます。これは表皮内汗管の閉塞により、表皮内に汗が貯留し水疱を作ったものです。痒みを伴い、発汗が始まると刺すような感じが生じます。
3.「あせも」の予防法、対処法
「あせも」の発症の基盤は、「発汗の亢進」です。予防には、発汗の必要性をできるだけ少なくする事です。屋内であれば、通気をすることやエアコンの使用も有効です。また通気性の良い服を着用したり、汗を掻いたら乾いた服に着替えたりするのも良いと思います。
対処法については、掻く事による湿疹化や、二次感染を生じさせないことです。皮膚の清潔を保つために、シャワーを浴びることは必要と考えますが、湯船に使ったりして汗を掻くと逆効果ですので、注意しなければなりません。
痒みや炎症については、抗ヒスタミン剤の内服やステロイド剤の外用が有効です。また、二次感染については、抗生剤等の使用も必要になってきます。
4.質問「あせも」が重症化するとどうなるのか?
「あかいあせも」は、痒みを伴っています。そのため掻いてしまうと、湿疹化して治りにくくなっていきます。また、掻いた所から細菌が入って「とびひ」になり、それが体のあちこちにうつって広がったりします。また小さなお子さんの頭では「あせものより」(乳児多発性汗腺膿瘍)という膿胞が多発した状態になることもあります。
それから汗は、アトピー性皮膚炎の悪化因子としても注目さています。アトピー性皮膚炎を持つ人は、発汗への対策をしっかりすることが重要と考えます。
5.「ベビーパウダー」は使ってもいい?どう使えば良い?(天花粉は?)
「ベビーパウダー」とは、「あせも」や「ただれ」の防止として皮膚に塗布する粉末剤を総称します。乳幼児に用いることが多いため、この名称が用いられます。主たる原料はタルクなどの鉱石や植物のでんぷんから作られます。
江戸時代から用いられている「天花粉」や商品名「シッカロール」もこれに含まれます。これらの効果については、医薬部外品であるため厳密な評価は出来ませんが、実際に使用してみて効果があれば、使用して構わないと思います。「ベビーパウダー」の作用機序として、汗を吸い取ることにあると考えます。
ですから、1回に大量につけて汗を掻いたままにしておくと、湿った固まりになって却って良くないかもしれません。汗を掻いたら、水分を含んで固まりになったものを取り除き、新しく付け替えるようにした方が良いと思います。
6.汗かきのため塗り薬が流れてしまうが何か良い方法は?
外用薬は塗った後皮膚へ吸収されて効果を発揮しますので、外用後時間が経って発汗した場合は気にしなくても良いと思います。ただ外用時に大量に発汗している場合は、濃度や使用感に影響を与えると思います。
入浴後に汗を掻いている場合は、しばらく涼んで発汗が治まってから外用したら良いと思います。
7.こまめに汗を拭いたりして気をつけているが、それでも「あせも」になってしまいます。何か良い対処は?
「あせも」の予防の基本は、発汗を促す状況を回避することです。それには、まず高温多湿の環境を避けることにあります。次にそれが避けられない場合は、通気性の良い服を着たり、冷却をするなどして、発汗を抑えることが必要です。
こまめに汗を拭くことは有効と思いますが、衣服が汗で濡れている場合は着替えることも必要と思います。また、首にタオルを巻いて作業をされる方がおられますが、その部分に「あせも」を生じているのを時々見ますので、タオルを巻かないで拭くようにしたほうが良いと思います。それでも「あせも」になってしまった場合は、掻いて湿疹化や二次感染を生じないよう早く治すことが大切だと思います。
8.「あせも」に見えるが、「あせも」に似ている他の発疹など(「あせも」と似ている他の皮膚疾患)
乳幼児では、頭部に生じた「あせも」が二次感染を起こして「乳児多発性汗腺膿瘍」いわゆる「あせものより」になっていることがあります。これは細菌感染症ですので、「とびひ」に準じた治療が必要です。
また、同じく乳幼児で首、腋、外陰部などに「あせも」様の皮疹が生じた場合、カンジダと言うカビがついていることもあります。この場合は、抗真菌薬の外用が必要です。
首や肘の内側・膝の後ろ側に、かゆみや発疹が生じた時、「あせも」が出たと言われて受診される方が多くおられます。実際には、アトピー性皮膚炎であることが多く、単なる「あせも」とは対応が異なります。
青年期以降で、肩、前胸部、上背部に赤いブツブツが生じた場合、いわゆる「にきび」であったり、「マラセチア毛包炎」というカビによる症状のこともあります。何日経っても良くならなければ、皮膚科を受診することをお勧めします。