皮膚の病変は肉眼で見られるので、誰にでも診断できるように思われがちです。内科や外科など他科ではエコー、CT、MRIなど画像診断が発達していますが、画像を漫然と眺めても診断できません。それと同じように、皮膚病変を正しく診断するにはそれなりの経験と知識が必要と考えます。
皮膚疾患の診断はただ肉眼で見て行うだけではありません。最近では、ダーモスコピーという皮膚を拡大して観察できる道具も普及してきました。その他よく行う検査に、顕微鏡検査があります。水虫をはじめとするカビによる病気は、目で見るだけでは100%正しく診断できません。特に爪水虫で飲み薬をするなら、必ずカビがいることを証明する必要があると思います。
また必要であれば、皮膚の組織検査(皮膚生検)や血液検査(アレルギー検査、血液一般や肝機能検査他)および画像診断も行います。それから皮膚科でしか行わない検査もあります。たとえばパッチテスト(かぶれの原因究明)や光に関するテストなどはその代表的なものです。
昔から「皮膚は内臓の鏡」と言われています。皮膚に何か症状が出現した場合、皮膚にだけ原因がある場合もありますが、本当は皮膚以外に病気があり、その部分症状として皮膚に症状が出現することがあります。このことから、我々皮膚科医は常に全身というものを考慮して診察に当たらなければなりません。
しばしば経験するものとして、糖尿病があります。糖尿病では感染症を起こしやすく重症化しやすいので、蜂窩織炎や足の潰瘍や壊死から糖尿病が見つかることがあります。また、糖尿病に特異的な皮膚症状もあります。
また、比較的頻度は少ないですが、皮膚症状から膠原病やリンパ腫が見つかることもあります。
それから、内臓の病気が皮膚に出たものではありませんが、他科と関連する病気として薬疹があります。様々な薬が多彩な皮膚症状を引き起こします。また、肝機能障害、腎機能障害、造血器障害など、他の臓器のも障害を引き起こすことがあります。
このように皮膚の症状から、全身疾患との関連の有無や関連する疾患を診断できなければなりません。ですから、皮膚に症状があり他の疾患が不安な場合でも皮膚科を受診してください。他科との連携が必要なときは適切な科へ紹介することが出来ると思います。
皮膚科では飲み薬や軟膏を処方するだけといったイメージを持っている方がおられるかもしれません。確かに、皮膚科治療の中で外用療法が占める割合は大きいですが、光線療法やレーザー療法、冷凍凝固療法、手術的治療なども行っています。
特に皮膚科で手術というとぴんとこない方もおられますが、皮膚腫瘍の摘出や再建、やけどの植皮術などもやっています(当院では、局所麻酔手術に限って行っています。必要な場合は、総合病院の皮膚科へ紹介させていただきます) 。
皮膚科は乳幼児から高齢者まで全ての年齢層を診ています。乳幼児に多い疾患として、乳児脂漏性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、肛囲皮膚、とびひ、水いぼ、みずぼうそう、りんご病、手足口病などがあります。
また、高齢者に多い疾患として、皮膚そう痒症、皮脂欠乏性湿疹、貨幣状湿疹、老人性疣贅などの皮膚良性腫瘍、基底細胞がんなどの皮膚悪性腫瘍、足白癬、爪白癬、帯状疱疹、疥癬などがあります。このように、年齢によりよく見られる疾患が異なっています。