皮膚の潤いは、皮膚表面を覆う皮脂、角質細胞内にある天然保湿因子、角質細胞間にある細胞間脂質によって保たれています。しかし、年を重ねるとこれらのいずれもが減少し、水分を保てなくなって乾燥肌へとつながっていきます。また、過剰な洗浄を行うと、角質細胞間脂質であるセラミドが溶出し乾燥肌を生じると言われています。
アトピー性皮膚炎においては、セラミドの減少と天然保湿因子を作るフィラグリンの減少による乾燥肌と皮膚のバリア機能異常が発症の要因に重要であると言われています。
肌が乾燥してくると、外からの刺激に敏感になり、かゆみを生じやすくなります。そのため、主婦や理美容師、飲食店員など水や洗剤を使う仕事をしている人は、手荒れが起こりやすいのです。また、年をとると徐々に乾燥肌が進行しますので、年配の方に皮脂欠乏性湿疹が起こりやすくなります。アトピー性皮膚炎の人も冬になると肌の乾燥が強くなり症状が悪化します。
皮膚表面の汚れは、皮膚のトラブルの原因となるため洗浄することは必要です。しかし、必要以上に皮脂や細胞間脂質が失われないよう洗い方に気を付けることが重要です。具体的には、石鹸を良く泡立て、手のひらか綿素材のタオルで、肌をなでるようにやさしく洗いましょう。ナイロンタオルを使ってごしごしこするような洗い方は、肌によくありません。洗顔も洗顔料をよく泡立てて、強くこすらずに洗いましょう。
保湿は健康な皮膚を守るための大切なスキンケアです。乾燥肌の人は、毎日、保湿剤を塗るようにしましょう。保湿剤は角質が水分を吸収している入浴直後に塗るのが効果的です。時間の経過とともに水分は蒸発します。保湿剤は、水分が逃げないよう、角質に素早くふたをする役割をもっています。
十分な保湿効果を得るためには、塗り方が重要なポイントとなります。軟膏やクリームは、人差し指の先から第1関節まで伸ばした量、ローションタイプは手のひらに1円玉大の量が、手のひら2枚分の面積を塗る量となります。
塗った後にティッシュが皮膚に付く、または、皮膚がテカるのも使用量の目安になります。保湿剤を塗ってもかゆみや発赤を伴う場合は、単純な乾燥だけでなく炎症を伴っています。この場合は、皮膚科を受診するようにしましょう。
手のお手入れについては、ハンドクリームの使用を勧めますが、同時に手を保護することも大切です。洗いものや洗濯、掃除の時に手袋を使用するなどしましょう。手が荒れている人は、極端な洗浄は禁物で、特にアルコールの使用は控えてください。ハンドクリームの使用回数は、乾いたら塗る感じで良いと思います。
荒れやすい唇は、リップクリームを優しく塗って保湿を心がけましょう。リップクリームを使用続けても唇が荒れる人は、リップクリームが合わない可能性があります。そのような場合は、皮膚科を受診してください。
入浴時には、暑いお湯に長くつかるのは避けましょう。熱すぎ、長めの入浴は、かゆみの増加や皮脂や細胞間脂質の減少につながります。入浴はシャワーにするか、ぬるめのお湯につかり、なるべく短時間であがるようにしましょう。繰り返しになりますが、体を洗うときには、洗浄力の強力な洗剤やナイロンタオルを使用しないようにしましょう。
入浴後の乾燥を防いでくれる保湿効果のある入浴剤の利用も良いと思います。乾燥肌の人は、入浴後や温水プールを利用した後は、保湿剤を忘れずに塗りましょう。年を重ねてくると、すねや肩、腰回りが特に乾燥しやすくなります。皮膚が乾燥していないか、よくチェックしてください。
水仕事や作業をする時に手を保護することや、暖房器具を使用する際には湿度を測り加湿器を使用することも大切です。かゆみを伴うときは、アルコールや刺激物を避けてください。また、かゆみや赤みを伴う場合は、保湿剤だけでは不十分なことが多く、きちんと治療を受けましょう。